ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Maria Semple の “Where'd You Go, Bernadette” (2)

 きょうからプロフィールを公開することにしました。老後を考えての結論です。興味のある方はご覧ください。
 さて、あらためて米アマゾンを検索すると、本書の評価は相変わらず星4つ半だが、レビュー数は784に増加。ますます人気が高まりそうな勢いである。
 ぼく自身の評価はそれほどでもないが、例によってへそ曲がり、かなり一方的な見方によるものだと自覚している。たとえば、これが今年のアレックス賞受賞作でもあることからわかるように、本書には青春小説としての側面もある。メールのやりとりに混じって、主人公 Bernadette の娘 Bee の独白も相当な紙幅を占めている。この Bee をむしろ主人公と考えてもいいくらいだ。
 けれどもぼくは、本書を読みだしたときからクスクス笑いつつ、いったい、この〈笑いのマジック〉の本質は何だろう、と首をひねりつづけていた。というのも、たまたま先週読んだ Kate Atkinson の "Life After Life" について駄文を綴った際、「ドタバタ喜劇を通じて、正義と不正義、誠実と不誠実、正気と狂気の問題について掘り下げていく」作品だったらよかったのに、とナンセンスな注文をつけたばかり。そのあとすぐに取りかかった本書がコメディーだったので、この笑いの本質は何かと気になったのだ。
 レビューでは、その結論をネタバレにならない程度にまとめたつもりである。それを要約すれば、実存の問題にかかわるコメディー、だろうか。具体的には、「解釈の仕方によって正気と狂気が逆転するという恐ろしい事態」を描いたコメディーである。
 ぼくとしては、「この状況をとことん戯画化して、さらに拡大」してほしかったところだが、これはまあ、「へそ曲がり、かなり一方的な見方」にすぎない。「『とんでもないコメディー』が常識的な結末を迎えたのは尻すぼみ」というのも一種のイチャモンでしょう。屁理屈をこねず、もっと素直に楽しみたい佳作だと思います。