ゆうべ、意外にも早くブッカー賞のショートリスト発表のニュースをキャッチするまでは、Richard House の "The Kill" を読んでいた。同賞の第一次候補作である。
今週から取りかかったのだが、イマイチ乗れない。ミステリアスな筋立てで、それなりにおもしろく読めるものの、え、こんなのがブッカー賞候補作か、という疑念が脳裡をかすめる。
舞台はナポリ。共同ビルの女管理人や、ビル内のイタリア語学校に通う日本人の若い女、ビルに住むマイクロバスのドライバー、薬剤師の一家、それから、ビルの住人ではないが売春婦などが次々に登場。最初はそれぞれ独立したエピソードがつづくが、やがてそれが次第に結びつく。鍵となるのはどうやら、豪華ホテルに住みながら、なぜかビルの地下室を代理人を通じて借りた兄弟らしい。この兄弟に犯罪の匂いがする。
もう少しハッキリ書いてもいいのだが、なにしろミステリ調なので、ネタを割りすぎてもいけない。たぶん、これからもっと快調になるんだろうな、というところで上のニュースが飛びこんできた。
未読の候補作のうち、すでに入手していたのは Ruth Ozeki の "A Tale for the Time Being" である。"The Kill" を中断するともう読む気がしなくなる恐れもあるが、あまり躊躇せず乗り換えることにした。
きょうのところ、正解。けっこうおもしろい。
なんと日本人の十代の娘、Naoko Yasutani、通称 Nao が主人公で、彼女の日記が未来の読者に向けて綴られる。内容は、104歳の曾祖母 Jiko の人生物語ということだが、まだ本格的には始まっていない。Nao は秋葉原のメイド喫茶で日記を書いていて、ぼくはテレビでしか知らない世界。otaku や hentai などの説明がユニークだ。
その日記がなぜかバンクーバーの北部、Desolation Sound にある離れ小島の海岸にプラスチック袋入りで打ち上げられる。拾った島の住人 Ruth が興味を示し、Nao が日記を綴るペースにあわせて読み進むことにする。
なんとなく、いまのぼくには身につまされるテーマが示されているようなのだが、まだ定かではない。これから晩酌タイムなので、きょうはこのへんで。