さて、ようやくほんとうに雑談開始。まずタイトルだが、これは 'Viet Cong sympathizer'(p.99)、北ヴェトナムのスパイという意である。そのスパイがなぜか今は一室に監禁され、どこかの国(新しいヴェトナム?)の Commandant 相手に昔の活動内容を告白している。
最初の山場は、サイゴン陥落時の大混乱だろう(p.42〜)。今や YouTube でも見ることのできる(Fall of Saigon 1975)、あの有名なアメリカ大使館からの脱出劇(と呼ぶべきではないのかもしれないが)を思い出させるほど手に汗握るシーンになっている。
が、今のところ戦争の直接的な描写はそこまで。主人公のスパイは、南ヴェトナムの秘密警察長官だった将軍とともにアメリカに亡命。ロスに居を構えた将軍と、その周辺に群がる旧軍人たちの動静を探る密命を帯びている。彼らが政権奪還を画策しているかもしれないからだ。
その旧軍人の中に内通者がいるのでは、といったあたりから第二の山場が始まる。'We have an informer. A spy. Both looked at me, as if for confirmation. I kept my face impassive even as my stomach began to rotate counterclockwise.' (p.83)
この Both は将軍とCIAの要員で、二人とも主人公のことを信頼している(かのような)設定だ。がぜんスパイ小説らしくなるが、どこまでネタを割ったらいいものか。
ぼくの興味は、じつは粗筋とはあまり関係ない部分にあるのだが、それを紹介するのはもう少し先へ進んでからのほうがいいかもしれない。
(写真は宇和島市西江寺の庭園。江戸初期に造られた枯山水の庭で、愛媛県の名勝に指定されている)