ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Ingrid Hill の “Ursula, Under”(2)

 前回、「一般にはあまり知られていない作品かもしれない」と書いたが、じつはこれ、昔のジャケ買い本。ぼく自身、実際に読むまでどんなものか知らなかった。
 入手したいきさつも憶えていない。表紙に "The Time Traveler's Wife"(未読)で有名な Audrey Niffenegger の寸評が載っているので、もしかしたら、同書がらみの関連本をネットサーフィン中に見つけたのかもしれない。で、アマノジャクのぼくのことだから、誰もが飛びつきそうな本よりこちらを、という不純な動機でゲットしたのだろう。
 そんな〈ジャケ買いシリーズ〉も開始しなくては、と思って取りかかったのだが、はは、いろんなシリーズがありますな。要は、積ん読の山を切り崩すだけのこと。ただ、山が高すぎるので、いくつかルートがあったほうがいいでしょう。
 ジャケ買いのコツ、というほどでもないが、上のように、ある作品をベースに関連本をどんどん検索し、気に入った表紙の本の紹介をチラっと読む。それで面白そうだなと思ったら買う。意外に「本は見かけによる」ものだ。あ、これ、いつかも書きましたな。
 文学史に残る作品や、権威ある文学賞の受賞作・候補作、ベストセラーなどを追いかけるのもいいけれど(もちろんぼくも遅れ遅れで追っかけているが)、それはいわば有名道場での稽古。たまには武者修行の旅に出かけないと、どれくらい自分の目が肥えてきたのか分からないような気がする。
 というのはタテマエで、ホンネを言うと、ジャケ買いのほうが世に隠れた名作を発掘したという自己マンにひたりやすい。大昔、神保町の古本屋さん、たとえば〈泰文社〉あたりで発掘にいそしんだころと違って、この時代、そんなことはあり得ないのですけどね。
 ともあれ、もはや年金生活だ。以前のように気楽に財布のひもをゆるめるわけには行かない。そこで書棚の奥から引っ張り出したのがこの "Ursula, Under"。「世に隠れた名作」というほどではないが、クリーンヒットくらいにはなるでしょう。
 ぼくは面倒くさいので読まなかったが、著者 Ingrid Hill との対談記事もふくめ、巻末に懇切丁寧とおぼしき Readers Guide が載っている。「実話からヒントを得たエピソードもありそうだ」というぼくの勝手な推測が正しいかどうか、興味のある方はご確認を。
 それにしても、これまた長い本だった。退職前、「辞めて何をするんですか」とよく訊かれたものだが、これを読んでいるうちに当面の目標が決まった。そうだ、長い本を読もう! なるべく、ですけどね。
(写真上は、先日の帰省中に撮影した愛媛県大洲市の〈おはなはん通り〉。「東京ラブストーリー」のロケ地としても有名で、カンチがリカを探して走ったシーンに出てくる。写真下は、リカがカンチに別れの葉書を投函したポスト)