ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Michael Ondaatje の “Warlight”(1)

 今年のブッカー賞候補作、Michael Ondaatje の "Warlight"(2018)を読了。さっそくレビューを書いておこう。(7月25日の候補作ランキング関連の記事に転載しました)

Warlight: A novel

Warlight: A novel

[☆☆☆★★] 青春時代にはいつも嵐が吹き荒れるものだが、その舞台が本書のように第二次大戦直後、まだ空襲の傷跡が生々しいロンドンとなると、さぞ激しい嵐が吹き荒れたことだろう。そんな青春の嵐の象徴として見ると、本書の warlight はやや物足りない。焦点がぼやけ気味だからだ。両親が旅立ったあと、突然カゴの中の生活から解き放たれた少年がいろいろな人物と出会い、夜の大冒険をはじめる前半は謎に満ちて面白い。またそれが回想談ということでノスタルジーにあふれ、詩的な情景描写に見るべきものがある。読了後に意味のわかる伏線の張り方もみごと。スパイ小説を思わせるアクションシーンもいい。が後半、提示された謎の解決篇となったところで視点がぶれ、また内容的にもスパイ小説、ロマンス、人情話、家庭小説、そしてもちろん青春小説と拡散。どの話もよく出来ていて心の琴線にふれるのだが、強烈なインパクトには欠ける。ネタは割れないが唯一意外な顛末にしても、嵐が去って青春をうしない、若気のいたりに気づいたことへの感傷主体で新味はない。何より焦点が定まり切れていない点に不満を覚えるが、各シーンの叙情を味わうべき作品。過ぎ去った青春への挽歌としては佳編である。