ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Rohinton Mistry の “Such a Long Journey”(2)

 Rohinton Mistry のことは、長いあいだ気になっていた。ぼくがブッカー賞なるものの存在を知ったのは2000年の夏だが、当時はそれほど関心もなく、その後も最新の、あるいは過去の受賞作を読むだけで、候補作にまでは手を伸ばさなかった。
 それでもいつか読もうと思ってたくさん買い漁ったなかに、Rohinton Mistry の本が3冊混じっていた。いずれも同賞の最終候補作で、刊行順に、"Such a Long Journey"(1991)、"A Fine Balance"(1996)、"Family Matters"(2002)である。この3冊をぜんぶ片づけるのに20年近くもかかろうとは、まさに「かくも長き旅」だったと言うしかない。
 ただ、実際その旅に出かけたのは2年前に退職してから。まず手に取ったのが "A Fine Balance"(☆☆☆☆)。 

 ついで、"Family Matters"(☆☆☆★★★)。 

 そして今回の "Such a Long Journey"(☆☆☆★★)。 

 たまたま長いものから順に読んだだけだが、結果的にそれが面白順になっていると思う。
 3作に共通する点は、「さまざまな要素が渾然一体となった狂騒劇」、「市民生活における悲喜劇」だろう。そんな作品はほかにもゴマンとありそうだが、狂騒劇や悲喜劇が、その作家の属する民族の伝統や文化、歴史を物語る国民文学の域にまで達している例は珍しいかもしれない。少なくとも、東洋の島国の現代文学ではなかなかお目にかからないような気がする。いま寝床のなかで(なんと3ヵ月前から)読んでいるのは『みかづき』だけど(もちろん、これは悲喜劇とはべつ系統の作品のようだけど)、森絵都を国民作家と評するひとはいるのでしょうかね。 

みかづき (集英社文庫)

みかづき (集英社文庫)