ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

天沢退二郎の『まわりみち』

けさの新聞で天沢退二郎氏の訃報を知った(以下、敬称略)。 天沢退二郎は、肩書きとしては「フランス文学者・詩人」ということだが、寡聞にして学者としての業績は知らない。が、アラン=フルニエ作『グラン・モーヌ』の訳者ということだけは知っている。原…

Omar El Akkad の “What Strange Paradise”(2)

Elizabeth Taylor(1912 - 1975)の "Angel"(1957)を読んでいる。と聞いて、え、あの大女優が小説も書いていたのか、と驚くひとも多いかもしれないが、じつはこの Elizabeth Taylor、れっきとしたイギリスの女流作家。 ぼくも昔は知らなかった。いつだった…

Peter Handke の “A Sorrow Beyond Dreams”(1)

オーストリアのノーベル賞作家 Peter Handke(1942 - )の "A Sorrow Beyond Dreams"(1972, 英訳1974)を読了。1971年に自殺した Handke の母 Maria の思い出が綴られた作品である。さっそくレビューを書いておこう。 [☆☆☆★★] 肉親の死について語るのは気が…

Heinrich Böll の “The Lost Honor of Katharina Blum”(1)

先週ジブリパークへの旅行の行き帰り、新幹線のなかで読みはじめたドイツのノーベル賞作家、Heinrich Böll(1917 - 1985)の "The Lost Honor of Katharina Blum"(1974, 英訳1975)を数日前読了。諸般の事情で、レビューをでっち上げるのがきょうまでズレこ…

Nikos Kazantzakis の “Zorba the Greek”(2)

先週、話題のジブリパークに行ってきた。いまは先着申込み順になっているらしいけど、昨年11月だったか、家人が応募したときは抽選。「ジブリの大倉庫」と「青春の丘」を引きあてた。超ラッキー、と知人たちにうらやましがられたものだ。 ぼくはジブリ大ファ…

Omar El Akkad の “What Strange Paradise”(1)

年が明けても長らく冬眠中だったが、きのうやっと、2021年のギラー賞(the Scotiabank Giller Prize)受賞作、Omal El Akkad の "What Strange Paradise"(2021)を読了。同賞は日本の読者にはなじみが薄いようだが、カナダでは最も権威のある文学賞である。…