前にも書いたように、ぼくは恥ずかしながら『アンネの日記』も『シンドラーのリスト』も未読。ナチス物といえば、その昔、『オデッサ・ファイル』のような娯楽小説のほうをたくさん読んだものだ。それゆえ、シリアスな系統はあまり詳しくないのだが、今まで英語で読んだ範囲で言えば、今回の "Sarah's Key" のような情緒的アプローチの作品でいちばん印象深いのは、ご存じ Bernhard Schlink の "The Reader"。
The Reader (Movie Tie-in Edition) (Vintage International)
- 作者: Bernhard Schlink
- 出版社/メーカー: Vintage
- 発売日: 2008/11/25
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その点、Isaac Bashevis Singer の "Enemies, A Love Story" はかなり面白い。
- 作者: Isaac Bashevis Singer,Aliza Shevrin,Elizabeth Shub
- 出版社/メーカー: Farrar, Straus and Giroux
- 発売日: 1988/04/01
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また、主題はホロコーストそのものではないが、Gunter Grass の "Crabwalk" は、ドイツ人の心の奥に潜むユダヤ人「区別意識」を鋭くえぐりだした力作。
- 作者: Guenter Grass,Krishna Winston
- 出版社/メーカー: Mariner Books
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それと同じことが、今度読んだ "Sarah's Key" にも言える。何しろ「情緒的アプローチの作品」なので「ないものねだり」になってしまうが、ぼくとしては、フランス人にもユダヤ人への差別意識があったという点をもっと掘り下げて欲しかった。
ナチズムについては、ハンナ・アレントの『全体主義の起源』や、ジョージ・スタイナーの『青ひげの城にて』などが知的興奮を与えるものとして記憶に残っている。かねがね、そういう作品を小説形式で読みたいと思っているのだが、勉強不足のため、まだ出会ったことがない。アレントやスタイナーに匹敵する小説家といえば誰なのだろうか。
…そうだ、忘れていた、Irene Nemirovsky の "Suite Francaise" のことを。
Suite Francaise (Vintage International)
- 作者: Irene Nemirovsky
- 出版社/メーカー: Vintage
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