ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“When Will There Be Good News?” 雑感(2)

 相変わらずというか、ますます快調。これはもうムチャクチャ面白い本である。こんな本を読んでいると、つくづく宮仕えの身がイヤになる。480ページ近い長編だが、時間のある人ならたぶん2日で読み切れるだろう。
 一種のミステリ、正確にはクライム・ノヴェルだと思うので、どこまで粗筋を書いたらいいか迷ってしまうが、今まで読んだ範囲は4部構成。"In the Past", "Today", "Tomorrow", "And Tomorrow" という章題がついている。第1部で忌まわしい事件が起こり、その30年後の話が第2部以降だが、読んでいるうちに、いずれ再び大変な事件が起こりそうな予感がしてくる。それがいつ、どんな形で発生するのか…。ある程度予測はつくのだが、詳細までは読めない。そんな興味が大きな柱となっているので、これはやはりクライム・ノヴェルと言っていいだろう。
 主な登場人物はみな、何らかの過去を背負っている。人間、年をとれば過去はつきものなので当然の話だが、本書における過去はすべて別離と同意語だ。犯罪、事故、病気、離婚などが原因で、肉親をはじめ愛する者との別れを余儀なくされた人たち。その数はかなり多い。
 で、どの人物もほかの誰かと会ったとき、話をするとき、必ず自分の過去をふりかえる。その昔愛した相手、目にした光景、起こった出来事。それが一度にではなく、少しずつ紹介されるので、最初はどんな人間なのか、相互の関係がどうなっているのかよく分からないが、どの人物像もすっと頭に入ってくる。心理描写、性格描写は非常に緻密で、通常のミステリの場合、そういう表現は物語の展開に変化をつけるための添え物に過ぎないことが多いが、本書は違う。お互いに過去のある人間同士がぶつかり合うのが現在、というテーマが終始一貫流れている。純文学との接点がそこにある。
 …ううん、粗筋にふれないで構成要素を分析するのはむずかしい。今日はこれまで。