ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The Forgotten Garden" 雑感(1)

 いやはや、これは面白い! たぶん面白いだろうとは思っていたが、まさかこれほどとは。去年の夏に買ったとき、すぐに読んでおけばよかった。
 作者の Kate Morton はオーストラリアの作家で、巻頭の写真を見るかぎり、若くて美人。ま、そんなことはどうでもいいのだが、一昨年の夏、処女作 "The House at Riverton" が Richard & Judy Book Club の夏読書に選ばれたときから少し気になっていた。が、さっそく買った同書は例によって積ん読。えらく分厚いし、アマゾンUKの評価も星3つ半とそう高くなかったからだ。
 ところが昨年、いつだったかは忘れたが、やはり同クラブの推薦図書に本書が選ばれ、たしか夏ごろからアマゾンUKではベストセラー。評価もかなり高いので入手したら、何と645ページの大作。"The House at Riverton" よりさらに厚く、これまたずっと積ん読だった。
 本書を長らくあとまわしにしてきた理由はもうひとつある。シノプシスから判断して、どうせ文芸エンタメ路線だろうとバカにしていたからだ。昨日から読みはじめ、今ちょうど半分を超えたところだが、案の定、文学的な深みはあまりない。ただ、やけに面白い。まだ2作目だというのに小説技術はすばらしく、たしかにイギリスでベストセラーになっているのもよく分かる。いわゆる大衆受けのする作品なのだ。
 内容はひとことで言えば「文芸ミステリ」。第一次大戦前、幼い娘がなぜか船上で置き去りにされ、イギリスからオーストラリアにたどり着く。成人して養父に事情を知らされた娘は愕然とする。私はいったい誰なのか。その謎を解くべく、いろいろな理由で年老いてから調査を開始するが、歳月はさらに流れ、老婦人は死亡。21世紀の今、その孫娘が祖母の秘密を解き明かそうとする。
 こんなふうに要約すると、ますます深みがないように感じられるが、それがどっこい、全然気にならない。19世紀末から現代まで、ざっと百年以上にわたる娘の家族の歴史が鮮やかな場面転換とともに語られ、その秘密が少しずつ解明されていく。続きを早く読みたいので、今日はこれまで。