ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Elizabeth Bowen の "A World of Love"

 いやはや、とんだ連休だった。当初のもくろみでは Philp Hensher の "The Northern Clemency" を読破するはずだったが、完全に中断。結局、「自宅残業」に明け暮れ、文学とはまったく縁のない毎日だった。
 うれしかったのは、四万十市にいる畏友から久しぶりにメールがあり、海岸から沖合の鯨を目撃したとのこと。ぼくも仕事なんかしないで見たかったなあ。この友人は福永武彦ル・クレジオの大ファンで、当ブログの数少ないリピーターの一人である。
 …今日は書くことがない。その昔、アマゾンに投稿して削除したレビューでお茶を濁しておこう。

A World of Love

A World of Love

[☆☆☆★] ボウエンの埋もれた名作か、と期待して読みはじめたのだが、残念ながらあまり面白くなかった。若い娘が屋根裏部屋で、母親の元婚約者が生前に書いたラヴレターの束を見つける、という出だしはなかなか魅力的。この設定ならふつう、手紙の中身を元に話が進むところだが、そもそも宛先が誰なのか明かされないまま、娘や母親、その夫、元婚約者の従妹など、手紙の発見を知って動揺する人々の心理がじっくり描かれていく。その微妙な葛藤がいちばんの読みどころで、そこに独特の哀感が漂っている点を評価して星半分おまけ。しかし、いわば愛の波紋が広がるだけで、手紙から発して劇的な展開があるわけではないので、いまひとつ盛り上がりに欠ける。英語は古風で凝った文体であり、上級者向きだと思う。