ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Virginia Woolf の “Mrs Dalloway”(2)

 コロナかふつうの風邪か、どちらにしても発症8日目。だいぶ回復してきたが、まだ微熱が残っている。ぼくは平熱が低いので、すこしでも熱があると頭がぼんやりする。この状態が長引くのが風邪をひいたときの通例で、してみると、やっぱりふつうの風邪だったのか。
 ともあれ活字を目で追いかけるのがしんどく、Orhan Pamuk の "Snow"(2002)もカタツムリくんペース。けっこう面白いのだが、すぐに疲れる。この記事もあっさり済ませたい。
 まず Virginia Woolf について。これは去年、"To the Lighthouse"(1927 ☆☆☆☆★)を読んだときにも書いたはずだけど、少なくともぼくの周囲では、Virginia Woolf は昔から忘れられた存在だった。ふだんの雑談でも、この有名な作家が話題になることはいちどもなかった。いや、いちどくらいあったかもしれないが記憶にない。記憶にあるのは、必要があって英文学史の勉強をしたとき名前を目にしたことくらい。
 そんな偏った経験しかないのでこれも偏見にすぎないが、今回 "Mrs Dalloway" を読んでみて、Virginia Woolf  が不幸のうちに生涯の幕を閉じたのも無理はないな、という気がした。作品の底に「恐るべき絶望とニヒリズム」があるように思えたからだ。
 Mrs Dalloway は自宅でもよおした社交パーティで首相を案内しながら、こんなことを感じている。.... she had felt that intoxication of the moment, that dilatation of the nerves of the heart itself till it seemed to quiver, steeped, upright; ― yes, but after all it was what other people felt, that; for, though she loved it and felt it tingle and sting, still these semblances, these triumphs .... had a hollowness; at arm's length they were, not in the heart; and it might be that she was growing old, but, they satisfied her no longer as they used; ....(p.191)
 このくだりのキーワードは、intoxication of the moment, semblances, hollowness だろう。そしてこの3つは、ほかのエピソードにも当てはまる場合があるのではないか。少なくとも、そんな観点が作品の鑑賞に役立つかもしれない。
 いかん、上の英文を書き写すうちに頭が痛くなってきた。つづきは次回にでも。

(下は、この記事を書きながら聴いていたCD)

Odes-Pinnock

Odes-Pinnock

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