突然、それは始まった。あとで考えれば当然予測すべきだったが、何しろ饒舌な文体に翻弄されてしまい、またいつものダイグレッションかと高をくくっていたら、気がついたときには作中人物同様、事件の渦中に巻きこまれていた。
…何だか思わせぶりなものの言い方だが、どこまでネタをばらしていいのか迷ってしまうような事件が発生。これで第1部との接点も生まれ、話が俄然面白くなってきた。
とはいえ、その事件後も相変わらず、悪く言えば回りくどい展開が続いている。主な登場人物は、シェフィールドの新興住宅街に元から住んでいる家族と、ロンドンから引っ越してきた家族の面々。事件前は、新しい学校に通いはじめた子供たちが主役の青春小説というおもむきだったが、事件後は…ううむ、ちょっとレッテルを貼りにくいが、一種の家庭小説と言えば間違いないだろう。
ここに来て大人の視点が導入されるようになったのが新しい変化で、それが第1部との接点ともなっているのだが、子供たちの視点もかなり重要で、双方の立場から二つの家族のプロフィールが次第に浮かびあがってくる。そのいわば二重構造ゆえに「回りくどい展開」となっているわけで、たしかに饒舌な語り口だが、これは意味のある饒舌である。つまり事件の流れを一気に追いかけるのではなく、子供が家庭内の変化を敏感に感じとり、夫が以前からの妻との関係をふりかえる。その結果、この先どんな進展があろうとも、それにリアリティー、説得力が生まれるのではないだろうか。