カナダで大ベストセラーとなっている Shilpi Somaya Gowda の "Secret Daughter" を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。
[☆☆☆★★★] 家族愛、とりわけ母親と娘の愛の歴史を4半世紀にわたって描いた感動的な大河小説。1980年代の中ごろ、産んだばかりの女児を家庭の事情でやむなく孤児院にあずけたインド人の女性と、
不妊症を宣告され、その女児を養子として引き取った
アメリカ人の女医。この2人の母親が交代で主役をつとめながら、やがて2人の夫、さらには「秘密の娘」の視点からもファミリー・サーガが綴られる。インドの貧しい家族と、女医の夫も医師ということで
アメリカのインテリ一家、そして夫が生まれ育ったインドの裕福な大家族。それぞれ社会的立場も文化的背景も異なる家族がさまざまな問題と事件に直面する様子は、まさに息をつくひまもないほど面白い。夫婦や親子の対立と和解、仕事と育児の悩み、子供の成長と自我の確立、貧困との悪戦苦闘…項目として挙げると定番の内容でも、立場の異なる家族の物語だけに変化に富み、抜群の
ストーリー・テリングと精密で詳細な描写によって支えられている。
アメリカ人として育った養女がインドで受けたカルチャー・ショックや、ムンバイの有名なスラム街を訪れたときの模様など、テーマや主筋以外の要素もしっかり肉づけされ、じつに読みごたえがある。そして何より、おおよそ察しのつく展開ながら、母親が娘にそそぐ愛情の深さにはやはり胸を打たれずにはいられない。英語はごく標準的で非常に読みやすい。