ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Shilpi Somaya Gowda の “Secret Daughter”(1)

 カナダで大ベストセラーとなっている Shilpi Somaya Gowda の "Secret Daughter"(2010)を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。

[☆☆☆★★★] 家族愛、とりわけ母と娘の愛の歴史を四半世紀にわたってしるした感動的な大河小説。1980年代なかば、生まれたての女の子をやむなく孤児院にあずけたインド人の女性カヴィタと、その子を養子として引きとったアメリカ人の女医サマー。このふたりの母が交代で主役をつとめ、やがてサマーの夫でやはり医師のクリシュナン、さらには「秘密の娘」、養女アーシャの視点も加わり、それぞれのファミリー・サーガが綴られる。インドの貧困層(カヴィタ)とアメリカの上流社会(サマー)、そしてインドの富裕層(クリシュナン)。社会的立場も文化的背景も異なる三つの家族がさまざまな問題と事件に直面する展開は、まさに息をつくひまもないほど面白い。夫婦や親子の対立と和解、仕事と育児の悩み、子どもの成長と自我の確立、貧困との悪戦苦闘。こうした日常茶飯の話題でも三家族三様、コントラストが鮮やかで変化に富み、抜群のストーリー・テリングと精密な描写も奏功して読みごたえじゅうぶんの物語に仕上がっている。アメリカ人として育ったアーシャがインドでうけたカルチャー・ショック、とりわけムンバイの有名なスラム街を訪れたときの驚くべき体験など、主筋以外の肉づけも完璧。そしてなにより、母が娘にそそぐ愛情の深さには理屈ぬきに胸を打たれる。直球勝負の勝利である。