Mark Slouka の "The Visible World" をやっと読みおえた。いつものようにレビューを書くまわりだが、もっか帰省中なので、昨日と同じくケータイからこれを打ちこんでいる。いやはや、面倒くさいことこの上ない。
[☆☆☆★★] よくある第二次大戦中の悲恋物かと終盤まで思っていたら、最後の最後で不意打ちを食らい、しばし呆然。そして涙。たしかに悲恋はからんでいるのだが、それ以上に、ひとを愛することの重さがずしりと迫ってくる。加えて、恋愛と同志愛、責任感との板ばさみ。人間を心の面でも極限状況に追いこむのが戦争なのだと、あらためて実感させられる。語り手はアメリカのチェコ系移民の息子。最初は彼自身のノスタルジックな回想が中心だが、そこにときおり、子どものころから薄々と感じていた両親への疑問が混じる。やがてその謎を解こうと、ふたりの死後、息子は祖国を訪問。ナチス・ドイツ占領下のプラハで起きた大事件を背景に、若い娘だった当時の母の悲痛なロマンスが次第に明らかになる。伏線はフェアに張られているものの、悲恋の真相はやはり意外。愛を引き裂かれ、愛より死を選び、そして愛の重さに耐えて生きた人びとの胸の内を思うと言葉をうしなってしまう。