ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"Then We Came to the End" 雑感(1)

 Joshua Ferris の "Then We Came to the End" に取りかかった。一昨年の全米図書賞候補作で、同年のニューヨーク・タイムズ紙選定最優秀作品の一つでもある。もっか帰省中で、お墓掃除やら何やらで意外に忙しく、まだ少ししか読んでいないが、なかなか面白い。こんな題材の小説を読むのは、たぶん初めてだ。
 舞台はレイオフの嵐が吹き荒れるシカゴの広告代理店。平社員の目を通して、上司や同僚の生態、社内風景がコミカルに、力強く、非常に洗練された筆致で描かれていく。小説中に登場人物の職場が出てくるのは珍しくないが、これほど全面的に会社が舞台となっている作品はちょっと記憶にない。あ、源氏鶏太梶山季之あたりが書いていそうだけど、いっさい未読。
 今のところ、主人公らしき人物はいない。が、何度か顔を出す人物は数名いて、それぞれのエピソードが書き連ねられている。仕事の話も出てくるが、むしろ勤務態度や対人関係、私生活などをだしにした社内ゴシップが中心。べつに大きなテーマがあるわけでもなさそうだが、ごく普通のサラリーマン生活の中で、自分を見失わないように懸命にがんばっている姿も見え隠れする。今後の展開が楽しみだ。
 なお、みんなと一緒にランチに行く社員が多いが、中には一人で食べる者もいる、というくだりには思わず苦笑い。ぼくも少数派の一人だからだ。