ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“The Paris Wife”雑感(1)

 もっかニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー、Paula McLain の "The Paris Wife" に取りかかった。売れているのはハードカバーだが、すでにペイパーバック版も出ているのでそちらを入手した。
 これはまず例によって魅力的なカバーに惹かれたが、食指が動いた理由はほかにもある。紹介文をちらっとながめたところ、どうやらヘミングウェイの話らしいとわかったからだ。ヘミングウェイはもう何十年も読んだことがないが、いまだにゴヒイキ作家の一人である。その文体の魅力について亡き恩師が目を輝かせながら、"Big Two-Hearted River" や "Hills Like White Elephants" などを例に挙げて解説してくださったのをつい昨日のことのように憶えている。
 これ以前に著名作家を採りあげた作品といえば、Colm Toibin の "The Master" くらいしか読んだことがない。あちらはまず物語として面白かったうえに、ヘンリー・ジェイムズの人物像をみごとに浮き彫りにしていた点で非常にすぐれた伝記小説であったが、タイトルからして伝記小説ではない本書の場合はどうだろう。何かヘミングウェイの本質に迫るような切り口が見られるのだろうか。
 と、そんな興味で読みはじめたが、これは序盤にかんして言えばメロドラマですな。主人公はタイトルどおりヘミングウェイの最初の妻で、主な舞台はシカゴに始まり、今はパリ。2人の出会いから結婚、パリへの移住という流れで青年ヘミングウェイの雌伏時代が描かれている。メロドラマというのは2人の恋物語で、『武器よさらば』の題材となった例の従軍看護婦の話も出てきてニヤリとさせられる。妻エリザベスの友人もヘミングウェイに恋をしていたがあきらめ、のちにドス・パソスと結婚する、というエピソードは知らなかったが、たぶん実話なんだろうな。
 肝心のヘミングウェイの創作にかかわるくだりもあるが、今日は予定外の晩酌でいちどダウン。ここまで書くのが精いっぱいだった。