ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Alone in Berlin” 雑感(1)

 ドイツの作家 Hans Fallada の "Alone in Berlin"(英訳)を読みはじめた。この本がどうしてぼくの目にとまったのかは不明。邦訳はどうも刊行されていないようだ、ということだけ確認して注文した憶えがある。ひょっとしてニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー・リストに入っていたのかも、と思って急遽検索してみたが見あたらない。気になって米アマゾンをちらっと検索すると、"Every Man Dies Alone" という英訳本もあって、こちらもかなり好評のようだ。
 これが現代の作品なら、またまた出ましたナチス物、今度の新味は何でしょう、と言いたくなるところだし、事実最初はそう思ったのだが、ふと奥付(洋書の場合は前付?)を見ると、本国で初版が出たのは1947年。つまり、まだ戦禍が生々しかった当時の作品である。これは本書を理解するのに必要な予備知識のひとつとなりそうだ。で、ぼくが読みだした英訳本のペンギン版刊行が2009年。同年のハードカバーがどうやら初訳のようだから60年余りのタイムラッグがあったことになるが、その意味は?
 …というのが周辺情報で、あとはこの作家についても作品に関しても何も知らない。要は、知らない作家の知らない作品だがなぜか気にかかる、というぼくには最高のパターン。唯我独尊、夜郎自大、これ以上何も調べずに本書を楽しむことにしよう。
 まだ序盤をほんの少し読んだだけなので断定はできないが、これはどうやらナチズムの本質に迫るものではなく、第二次大戦初期のベルリンを舞台に、一人息子の戦死にショックを受けた父親がレジスタンス運動に身を投じそう…という主筋を聞いただけで思い浮かぶ想定内のストーリーのようだ。ただ、意外性は少ないにしてもかなり面白そうだし、じつは思いもかけない展開が待ち受けているかもしれない。さて、どうなりますか。