ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Skippy Dies”雑感(1)

 注文していた今年のブッカー賞候補作の第2陣が届いた。ぼくはふだんレビューのたぐいはおろか、表紙の宣伝文句もほとんど読まないのだが、一度に何冊も届いたのでさすがに選別しないといけない。そこで裏表紙の紹介文だけ斜め読みした結果、おそらく泡沫候補だろうとは思ったが Paul Murray の "Skippy Dies" に取りかかった。
 まだ少ししか読んでいないので直感に過ぎないが、案の定、これはショートリストも厳しいんじゃないかな。ただし、読み物としてはけっこう面白い。ジャンルは青春小説+ラブコメといったところ。連日の猛暑で頭がますますボケ気味なので、肩の凝らない小説のほうがいいな、と思ったとおりの内容だ。
 舞台はダブリンのカトリック系男子校で、生徒側と教師側の物語が交互に進む。生徒側の主人公は Skippy というあだ名の14歳の少年。不器用で友人たちからよくからかわれるが、繊細で傷つきやすい…と書いただけでもう、どんな教室の風景か想像がつくだろう。彼の寄宿舎でのルームメイト、Ruprecht も重要人物のひとりで、こちらは数学の天才。宇宙の起源と地球外生命体との交信に強い関心をもっている。ほかにも、ドラッグを取引するワルガキ Carl もしばしば中心的役割を果たすなど、Skippy と彼を取り巻く少年たち、それから、男子校の隣りにある女子校の生徒たちの交流を描いた群像小説だが、これからたぶん Skippy に少しずつ話が絞られていくものと思われる。
 一方、教師側の主人公は Howard というまだ20代の青年で、勤務校の卒業生。アメリカ人の若い女と同棲しているが結婚には踏み切れない。教師の仕事にも熱心なわけではなく、生徒たちから Howard the Coward と呼ばれているほどだが、ある日突然、目の覚めるような美人の代用教員と出会い…。こちらも、以上の紹介だけでおおよそ想像がつく展開だ。ヒュー・グラントをモデルにして書いたのかな。