ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Skippy Dies”雑感(2)

 ガーディアン紙のHPをながめていたら、A. S. Byatt がオレンジ賞についてこんな発言をしている記事が目についた。The British novelist [Byatt] has been vocal in her criticism of sexism in the literary world, and also hit out at the Orange prize, which is limited to only women novelists. "The Orange prize is a sexist prize," she said. "You couldn't find a prize for male writers. The Orange prize assumes there is a feminine subject matter – which I don't believe in. It's honourable to believe that – there are fine critics and writers who do – but I don't." わが意を得たり、である! ぼくも男性作家だけを対象とするバナナ賞でも作ったら、と皮肉ったことがあるほどだ。(東洋の島国のマイナーなブログでそんな世迷いごとを述べてもナンセンスだけど)。
 閑話休題。昨日はおとといの深酒がたたってダウン。おかげで本書を読むのを中断してしまったが、ひと休みした理由はほかにもある。裏表紙の紹介文から想像したとおりの内容がおおむね続くので、休憩をはさんでもすんなりまた作品の世界に戻れるだろうと思ったからだ。
 前回は「青春小説+ラブコメ」と形容した本書だが、「総合学園小説」とでも呼んだほうが正しいかもしれない。学校を舞台にした小説といえば、生徒が主人公のものが大半を占め、あといくつか教師が主人公のものがある、というのが今までのパターンだったような気がするが、本書のように、教師と生徒双方の立場から交互に学校生活を描いたものはちょっと記憶にない。しいて言えば、Tobias Wolff の "Old School" が近いかな。あれも名門男子校が舞台だった(http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20080414)。
 とはいえ、本書のタイトルが示すように、力点は生徒のほうに置かれている。内容は親との断絶、友人との衝突、恋の悩み、性的妄想、ドラッグの魔力、知的関心…まあ、学園物と聞いて思いうかべるような話が何でもござれだ。一方、教師のほうは、青年時代のヒュー・グラントが出てくるようなラブコメ、といえば正しいイメージが伝わるだろう。
 ずいぶん長い小説で、今日で何とか半分を通過したところだが、第1部の終幕でヒートアップ。Skippy の学校で隣りの女子校との合同ダンス・パーティーがもよおされ、青年教師 Howard と美人の代用教員が会場責任者となる。ドタバタ狂騒劇も極まれりで、目新しさこそないが、ぼくは大いに楽しかった。