8月に読みたかった本が何冊かあり、ほんとうはそちらのほうが気がかりなのだが、まだ読み残している今年のブッカー賞のショートリスト落選候補作を今読んでおかないと、たぶん永久に積ん読になってしまうだろう。ということで、Helen Dunmore の "The Betrayal" に取りかかった。
今週は職場が繁忙期に入り、帰宅するとグッタリ。まだいくらも読んでいないのだが、それでもこれはなかなかいい感じだ。と同時に、なぜ落選したのかも何となく分かるような気がする。そのあたりを検証することも本書を読む面白さのひとつになりそうだ。
舞台は第二次大戦が終了して数年たった旧ソ連のレニングラード。主人公は小児科医 Andrei と保育園の保母の Anna 夫妻。今のところ、二人が交代で主役をつとめながら物語が進んでいる。Andrei の同僚の医師が診察した秘密警察の高官の息子がどうやら重病で、同僚は身の安全を考え、Andrei にセカンド・オピニオンを求めてきた…というより担当をおりたいらしい。
スターリンの名前こそまだ出てこないが、明らかに恐怖の時代の物語ということで、それからまた上のような滑り出しということで、本書のテーマはだいたいもう見えている。詳細こそ読めないが、今後の展開と結末もまあ、あの時代ならではのものだろうと察しがつく。きっとストーリーとしては面白いはずだ。でも、たとえば恐怖の全体主義の本質に迫るような突っ込みはどうかな。斬新な切り口はあるのかな。…などと、いつもの悪いクセで早い段階からアラ探しをしていけない。今後を期待しましょう。