ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Kevin Wilson の “Tunneling to the Center of the Earth”(2)

 アレックス賞は周知のとおりヤング・アダルト向けの良書を紹介する文学賞で、例年かなり水準の高い作品が選ばれている。が、何しろ毎年10冊ずつ受賞作があるのでフィクションにかぎっても読み洩らしが多く、最近のリストをながめると年に数冊しか読んでいない。
 去年にいたっては、今年の受賞作を検索するまで1冊も読んでいないことに気がつかなかったくらいで、あわててまず注文したのが本書だが、読後の今は、アレックス賞ってやっぱりいいなあ、と再認識。受賞作をすべて追いかけるのはとても無理だけど、これからもせめて2、3冊ずつくらいは読みたいものだ。
 本書の感想としては、雑感とレビューにさほど付け加えることはない。人生の深淵をかいま見るような思いのする内容ではないにしても、どの話もまず「いささか奇異な設定」や「一風変わった人物」に惹きつけられ、へえ、この先どうなるんだろうと興味がわいてくる。で、中にはかなりおぞましい場面もあるが、最後はハッピーとまで行かなくても「プラス思考のエンディング」。陳腐な形容句だが、「とにかく一服の清涼剤とも言うべき短編集」である。分量的にも持ち運びに便利な長さだし、英語も簡単。ぼくのようなサラリーマン洋書オタクには絶好の「通勤本」でした。