ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Salvage the Bones” 雑感

 大変遅まきながら、昨年の全米図書賞受賞作 Jesmyn Ward の "Salvage the Bones" をボチボチ読みはじめた。全米図書賞というと、ぼくはどうも相性がわるく、何冊か読んだ最近の受賞作の中で、あれはわりとよかったな、といまだに思えるのは Colum McCann の "Let the Great World Spin" くらい。パスした作品も多い。なんとなく、著名作家の顕彰的な意味合いもこめて選ばれたのでは、という気がしたからだ。それにひきかえ、たまたま読んだ候補作のほうには、さすがお目が高い、と感心したものがけっこうあるように記憶している。
 この "Salvage the Bones" にしても、メジャーな文学賞を取ったわりには、去年の末、各メディアが選ぶ年間ベストにはほとんど顔を出さなかった。そこで積ん読のままかと思っていたら、今年のアレックス賞のひとつに選ばれているのを発見。やおら取りかかった次第である。
 第一印象を述べると、今のところ、ううむ、やっぱりね…という出来ばえです。本書もふくめて去年の最終候補作を読むのはこれで4冊目だが、途中経過としては最下位。どうしてこんな作品が栄冠に輝いたのだろう。
 わるくはない。が、べつにすばらしいわけでもない。ジャンルとしては青春小説かな。舞台はハリケーンが接近中のミシシッピ川の河口、いわゆるバイユーという湿地帯の町。森の中に黒人一家が住んでいる。純情な高校生の娘が主人公だが、なんと妊娠していることが判明。その揺れる恋心と不安が綴られる。相手の少年にはべつの彼女がいるのだ。
 娘の兄が飼っているメス犬の出産シーンで始まり、娘やその兄弟が犬に愛情をそそいだり、少年たちのふざけ合い、ケンカなど、いかにも青春小説らしいシーンもあるのだが、娘の恋愛沙汰もふくめて、まあ、どうってことはない。近所の納屋に兄が忍びこむところなど、少年冒険小説らしい味わいもあるが、引っぱりすぎでサスペンス不足。得点材料としては、少年たちが飼っている闘犬の試合の模様がけっこう緊張感に満ちているあたりか。
 今後の流れを予想すると、ハリケーンが襲来して一気にボルテージが高まる、というのが定番だと思うけれど、さて実際どうなるんでしょう。