ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Jon McGregor の “Even the Dogs”(2)

 昨日は本書のレビューを書いたあと銀座に出かけ、同僚の結婚式の二次会に参加。電車の中は空調を切っている関係でやけに寒く、途中寄った本屋も薄暗い。でもまあ、酒が飲めるだけでもありがたいと思わなければ。
 閑話休題。本書の文体については雑感や昨日のレビューどおりだが、視点のほうは最後まで疑問がのこった。死んだ男の仲間たちと思われる we は、はたして現場にいるのかいないのか。たとえば司法解剖にも立ち会っている記述があるものの、そんな部外者の立ち会いが許可されるはずはない。死体搬送についても同じことが言える。
 そこでこの we は「必ずしも現場にいるとは思えない」わけだが、とにかく we が現場から実況中継するリポーターの役割を果たしていることだけは間違いない。これにより視覚的に生々しい効果が生まれていることもたしかで、カットバックの多用とあわせ、本書はじつに映画的な作品である。司法解剖や検死裁判などの場面が典型例だ。
 それにしても、最後まで読んでも旧作 "If Nobody Speaks of Remarkable Things" のことはさっぱり思い出せなかった。積ん読の山のほうが気になるので、あらためて読みなおす予定はない。そういえば、海外文学にハマってこの10年、どんな本も再読したことは一度もない。一期一会といえば聞こえはいいが、これでほんとうに理解しながら読んでいるのだろうか。