ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2冊の雑感 (1)

 今週は心身ともに絶不調。読書もさっぱりペースが上がらない。
 まず、1冊だけ読みのこしていた今年の Women's Prize for Fiction の最終候補作、A. M. Homes の "May We Be Forgiven" に着手。なかなかおもしろく、いまのところ、☆☆☆★★★くらいの出来ばえだと思う。ひょっとしたら賞レースの本命かもしれない。
 出だしはセンセーショナルだ。感謝祭のパーティーの支度中、主人公の Harry が突然、弟 George の妻 Jane に熱いキスをされる。George はテレビ局の重役だが、家ではどうやら暴君らしく、キレかたが半端ではないようだ。
 その George が交通事故を起こして相手は死亡。自分も精神的に混乱し、心療内科に入院する。たまたま Harry の妻は旅行中で、その妻の勧めもあって Harry は George の家に泊まり、Jane の心のケアをするうちに……。
 とまあ、なんだか昼メロみたいで、最初は文芸エンタメ路線かと思ったが、そのうちコミカルなエピソードが混じり、はたまた実存の悩みも示されるなど、読めば読むほど tragicomedy の様相を呈するようになる。さらには、George の息子 Nathaniel と Harry の心のふれあいも描かれ、これはなかなか味があってよろしい。
 ……と、本来ならクイクイ読めそうな内容なのだが、上の事情でなかなか思うように進まない。そこへなんと、きょう、前から注文していた Khaled Hosseini の新作、"And the Mountains Echoed" が届いてしまった!
 しばし迷ったあげく、とりあえず感触をつかもうと読んでみることにした。1952年、アフガニスタンの小さな村からカブールへと向かう親子の物語のようだ。第1章は、父親が子供たちに語り聞かせる昔話が中心である。ひょっとしたら、親子がべつべつに暮らすことになる暗示かもしれない。
 もう少し先まで読んでみたが、出来は前作 "A Thousand Splendid Suns" [☆☆☆☆★] ほどではないような気がする。あちらは冒頭からグイグイ惹きつけられたものだけど。さて、明日はどっちを読もうかな。