ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“The Quality of Mercy” 雑感

 今週は Barry Unsworth の最新長編、"The Quality of Mercy" をボチボチ読んでいる。先月初め、米アマゾンの新刊ニュースで知った本だが、アマゾンUKのほうでは、デカサイズながらすでにペイパーバック版も出ている。
 今まで着手をためらっていたのは、届いた本の裏表紙を見て、これが1992年のブッカー賞受賞作、"Sacred Hunger" の続編であることがわかったからだ。毎度不勉強のぼくは、恥ずかしながら同書は未読。やっぱり本編のほうから先に読むのが筋でしょう。
 とはいえ、あちらは600ページを超える大作なので、ちとシンドイ。長らく積ん読中で、だいぶ黄ばみが出てきたページをパラパラやったあと、結局、この20年後の続編に取りかかることにした。去年の9月刊行ということで、ひょっとしたら今年のブッカー賞候補作に選ばれるかも…
 と助平心にも駆られたのだが、いやいやロングリスト入りも厳しいのでは、というのが今のところの感想だ。読みながら、「やっぱり本編のほうから先に」と何度か思ったものだ。前作を読んだことのある人なら感動を新たにするのかもしれないけれど、何の予備知識もないぼくとしては、あちらはさぞドラマティックだったんだろうな、と想像するしかない。
 つまり続編の宿命で、まず前の作品の粗筋をどうしても挿入せざるをえない。その挿入の仕方は巧妙である。一気におさらいするのではなく、本書の登場人物の動きに合わせて断片的に話を紹介している。それから察するに、「前作はさぞ」となるわけだが、ひるがえって、本書のほうはスロー・ペースの展開で、まずまずおもしろいといったところ。
 今からその粗筋を書いてもいいのだが、ブッカー賞受賞作の続編といえば、Hilary Mantel の "Wolf Hall" がじつは3部作で、第2部がこの5月に出るそうです。ぼくは同書について長々と綴った駄文をこう結んでいる。
 「『クロムウェルと…モアの対比も鮮やかだ』とレビューには書いたが、ぼくとしてはじつは、上の点にまで踏みこんで理想主義者と現実主義者の違いを示してほしかった。さらには、前者の見事さと後者のはかなさを描きわけてほしかった。しかしそのためには、大作である本書でも分量が足りず、また新たな物語が必要なことだろう。ぜひ続編を期待したいところである」。
 なんだか予言が当たったような気分で、ちょっとうれしい。

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