ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Barry Unsworth の “The Quality of Mercy” (2)

 「やっぱり本編のほうから先に読むのが筋でしょう」と雑感に書いたが、残念ながら、そのとおりの結果になってしまった。少しずつ紹介される粗筋を読んだだけでも、本編の "Sacred Hunger" は、さぞすごい作品だったのではないかと思われる。ひるがえって、同書に感動した人が20年後の続編の知らせに喜び、この "The Quality of Mercy" を読んだとしたら、何だこりゃ、とがっかりするにちがいない。いくら後日談といっても、前作におんぶにダッコでは芸がない。前との関連を保ちつつ、ちゃんと独立した、できればさらにおもしろい作品に仕上げてこそ、続編を書く意味があるはずだ。
 …などとエラソーなことを書きましたが、なにしろ "Sacred Hunger" は未読なので説得力がない。日ごろの不勉強を痛感しています。全然予定になかった作品ではあるが、近いうちに catch up しなくては。
 "The Quality of Mercy" のほうは、商業資本家、地主貴族、低所得労働者、そして奴隷解放運動家といった18世紀中葉のイギリス社会を代表する人物を配し、それぞれの関係から生じる色々な「エピソードを巧妙に織りまぜている点」が読みどころだろう。くわえて、「ニューゲイト監獄から脱走した船乗りが財布を盗ったり盗られたりする珍道中」。これは笑えます。しかしこの程度で、はたして「続編を書く意味」があったのでしょうか。
 なお、"Sacred Hunger" と同じころのブッカー賞受賞作で、連作形式になっている作品がある。Pat Barker の "Regeneration" (1991) と "The Ghost Road" (1995) で、ブッカー賞を取ったのは後者だが、どちらも大変おもしろかった記憶がある。まだブログもレビューも書いていなかったころに読んだので、それぞれ「戦争神経症からの再生の日々」、「第一次大戦の特異な従軍記」とエクセルに打ちこんだメモ書きしか残っていない。とりあえずカバー写真を並べておこう。

Regeneration (Contemporary Fiction, Plume)

Regeneration (Contemporary Fiction, Plume)

The Ghost Road (William Abrahams)

The Ghost Road (William Abrahams)