ゴールデン・ブッカー賞(the Golden Man Booker Prize)の発表(ロンドン時間で今月8日)が近づいてきた。ご存じの方も多いと思うが、ブッカー賞財団では、同賞が設立されて今年で50年になるのを記念して、50年間の受賞作の中から最優秀作品を選ぶイベントを企画。まことに商魂たくましいですな、と茶化したいところだが、お祭りは盛大なほど面白い。ぼくもちょっぴり受賞結果に興味がある。(7月9日追記:ぼくの予想に反して栄冠に輝いたのは "The English Patient" でした)。
選出方法としては、まず1970年代(60年代もふくむ)から2010年代まで、5人の選考委員が分担して各年代ごとに5冊の最終候補作を選定。その中からファン投票でベストワンを選ぶというもので、すでに候補作は出そろっている。(点数はすべてぼくの採点)
1970年代 "In a Free State"(V. S. Naipaul ☆☆☆☆)
1980年代 "Moon Tiger"(Penelope Lively ☆☆☆☆)
1990年代 "The English Patient(Michael Ondaatje ☆☆☆☆)
2000年代 "Wolf Hall"(Hilary Mantel ☆☆☆☆★)
2010年代 "Lincoln in the Bardo"(George Saunders ☆☆☆★★★)
この企画と選考過程については現地ファンのあいだでも不満の声があり、たとえば有名なレビュアー Hobgoblin 氏いわく、「過去に "Midnight's Children"(☆☆☆☆★)が the Booker of all Bookers として選ばれているのに、今回は候補作にもノミネートされていない。これは選考の判断が主観的であることを示している」。
もっともな指摘であり、また、候補作のリストを見て、自分は投票に参加しないというファンもいるようだ。どうせなら最初からファン投票にすればよかったのに、とぼくも思う。そこでぼく自身の候補作を挙げておこう。
6,70年代は6冊も未読だが、いちおう Iris Murdoch の "The Sea, the Sea"(☆☆☆☆)。ただし、これは Murdoch のベスト作品とは言いがたい。(レビューはありません)
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90年代は3冊未読。激戦区だと思う。"The English Patient" も大好きな作品だが、Barry Unswerth の "Sacred Hunger"(☆☆☆☆★)。
00年代は1冊未読。90年代にくらべ受賞作の質が劣化しているのでは。各年代1冊ずつという候補作の選考基準に疑問が生じるゆえんだ。"Wolf Hall" か、Kiran Desai の "The Inheritance of Loss"(☆☆☆☆★)か悩むところだが、"Wolf Hall" でいいと思う。
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10年代は3冊未読。仕事に忙殺された8年だ。アメリカ馬の出走で賞レースが混乱。旧大英帝国産の劣化が続いている証拠だろう。"Lincoln in the Bardo" でいいが、これを選ぶくらいなら、90年代の枠を増やしてほしかった。
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上記の Hobgoblin 氏はぼく以上にへそ曲がりで、"Cloud Atlas"(☆☆☆☆★)に投票できないのか、という疑問を呈している。たしかに同書をはじめ、00年代の最終候補作には、10年代の受賞作よりすぐれたものが多いような気がする。ほかの年代についても同様の疑問があるはずだが、最終候補作まで枠を広げると収拾がつかなくなる。
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というわけで、ぼくのゴールデン・ブッカー賞は "Sacred Hunger" に決定。次点は、先週読みおえたばかりの "Cloud Atlas"。ただ、いまだ覚めやらぬ興奮がいずれ落ち着けば、いろいろ迷ってしまいそう。あ、実際に選ばれるのはたぶん "Wolf Hall" でしょう。
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