ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Isabel Wolff の “A Vintage Affair” (2)

 おとといはまだ半分近くのこっていたので、昨日中に読みおえるのは無理だろうと思っていたのだが、通勤時はもちろん、職場でも仕事の合間にこっそり読みつづけ、最寄り駅近くの〈ドトール〉で大半を片づけたあと、帰りのバスの中でめでたく読了。バスを降りて歩きながら、一種の euphoria を満喫した。ああ、こんな気分がずっと続けばいいのに! というわけで、昨日のレビューの書き出しとなった。
 今日は早くもいつものネクラな自分に戻ってしまったが、これは読むとほんとうに「いっとき幸せな気分にひたれる、人生がちょっぴり楽しく思えてくる」小説です! 冒頭を読んだ瞬間から「元気が出る小説」のような気がしていたのだが、まさかこれほどとは。べつに文学的に深刻なテーマを追求したものではないけれど、至福のひとときを与えてくれたことに感謝して、文芸エンタメ路線としては珍しく☆を4つ進呈した。雑感でもふれたとおり2009年の作品だし、米アマゾンの Book Club の推薦図書ということで、たぶん邦訳も出ているのではないだろうか。
 それにしても、ブランド服にこれほど深い世界が広がっているとは知りませんでした。ブランド志向ゼロ、ファッション感覚ゼロのぼくでさえすっかり魅了されたのだから、元から関心のある人にはたまらんでしょうな。いい服を着ることで人は幸せになれる、というのが主人公フィービの信念だけど、小説と同じでドレスやコートも「至福のひとときを与えてくれる」ことくらいはありそうだ。
 明るい話題ばかりで、ホロコーストやフィービの「深い心の傷」のほうを書く時間がなくなってしまった。しかしこれ、書くとネタをばらすことになってしまう。問題の核心は昨日のレビューで明らかにしたつもりだ。「人生には取り返しのつかぬ失敗や誤解、消しがたい後悔や自責の念がつきもの。それらとどう向き合い、いかに生きるべきかヒントがつかめるかもしれない」というわけです。