Isabel Wolff の "A Vintage Affair" を読了。さっそくレビューを書いておこう。
[☆☆☆☆] 読みはじめたときから、そしてなかんずく読後、いっとき幸せな気分にひたれ、人生がちょっぴり楽しく思える「元気が出る小説」である。人生には取りかえしのつかぬ失敗や誤解、消しがたい後悔や自責の念がつきもの。それらとどう向きあい、いかに生きるべきか、本書を読むとヒントがつかめるかもしれない。主人公の女性フィービは、ロンドン市内で年代物の高級衣料品専門のリサイクル・ショップを開店したばかり。客や競売相手、取材に訪れた新聞記者などとの会話がとても活発で軽妙洒脱、その語り口に思わず引きこまれてしまう。やがてフィービは死期の迫った客の老婦人と出会い、ホロコーストにかかわる悲痛な体験を聞かされ、そこに自分自身の深い心の傷を重ねるうちに…。楽しいラブコメと深刻な悲劇とのコントラストが鮮やかで物語に変化が生まれ、ほかにも親子がらみの緊迫した対決シーンなど随所に山場があり、その緩急自在の配合がじつにすばらしい。主な登場人物がフィービのとり扱うブランド服をきっかけに、なんらかの意味で幸福になる。いささか出来すぎの感はあるものの、このハートウォーミングな世界を楽しまずしてなんの人生ぞや。