ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“The Beautiful Summer” 雑感

 Cesare Pavese の "The Beautiful Summer" を読んでいる。というか、もう読みおえた。だからさっそくレビューを書いてもいいのだが、長らく積ん読中だった Peter Owen 社版の英訳本のタイトルは "The Political Prisoner" といい、同名の中編と "The Beautiful Summer" がいっしょに収録されている。"The Political Prisoner" のほうは初見で全然期待していなかったが、意外や意外、大昔邦訳で読んだ "The Beautiful Summer" よりもかえってしっくりくるくらいだ。それゆえ、そちらを読みおえてからまとめてレビューを書くことにしよう。
 さて今回、"The Beautiful Summer" という定番の青春小説を再読したのは、去る4月、「ドラッグ、ハードロック、暴力、セックスなどが盛りこまれたアングラ色の強い青春小説」である Eleanor Henderson の "Ten Thousand Saints" を読んだのがきっかけだ。同書の内容がすこぶる現代的なので、教科書のような古典的作品はどんな感じだったっけ、と郷愁にかられ、〈世界文学の夏〉シリーズのイタリア編として予定を組んでいたのだが、諸般の事情で今までずれこんでしまった。
 有名な冒頭の一節は、英語で読みかえしてもほんとうに美しい! Life was a perpetual holiday in those days. We had only to leave the house and step across the street and we became quite mad. Everything was so wonderful, especially at night when on our way back, dead tired, we still longed for something to happen, for a fire to break out, for a baby to be born in the house or at least for a sudden coming of dawn that would bring all the people out into the streets, and we might walk on and on as far as the meadows and beyond the hills. (p.133) 
 極論すれば、このくだりを英語で読みたいがために、わざわざ Alibris で古本のハードカバーを買い求めたようなものだ。今でこそペイパーバック化されているが、昔検索したときはハードカバーしか出ていなかった。
 とりわけ、'....we became quite mad.' という言葉が心に突き刺さりますな。あのころはたしかに……と思い出にふけりつつ、今日はこれから晩酌タイムです。