ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“A Month by the Lake & Other Stories” 雑感 (1)

 知り合いのオーストラリア人に例の一件を話したところ、'You have read a dangerous book! I guess you're in a dangerous situation.' と笑いながら言われた。なるほど、記事の削除は、ぼくの身の安全を考えてのことだったのか。それなのに大騒ぎして記事を復活させたとは、とんだやぶ蛇だったわけだ!?
 閑話休題。まったく予定になかった本だが、H. E. Bates の短編集、"A Month by the Lake & Other Stories" を読んでいる。敬愛する故・双葉十三郎氏の『愛をめぐる洋画 ぼくの500本』をパラパラめくっていたら、『湖畔のひと月』がふと目にとまった。「H・E・ベイツの小説が原作」というレビューの書き出しにビックリ。え、"A Month by the Lake" が映画化されていたのか! 恥ずかしながら、まったく知りませんでした。

 あわてて、長らく積ん読中で黄ばみを生じたペイパーバックを蔵出しした次第だが、H. E. Bates の作品はその昔、"The Feast of July" (1954) という長編を読んだことがある。内容はすっかり失念してしまったが、「静かな田園に訪れた愛の嵐」とエクセルに打ちこんだ読書メモを読み、なんとなく雰囲気だけは思い出した。かなりおもしろかった気がする。そんな記憶に頼ったいい加減な採点だが、☆☆☆★★★は確実じゃないかな。
The Feast of July

The Feast of July


 映画は安売りのブルーレイも出ているので、観てから読むか、読んでから観るか迷ったが、洋書オタクとしてはやっぱり後者でしょう。今まで表題作のほか数編読んだかぎりでは、「大人の小説ですなあ」というのが第一印象だ。
 驚いたことに、表題作の舞台はなんと、イタリアのコモ湖のほとりである。たまたま Cesare Pavese の "The Political Prisoner" と "The Beautiful Summer" を読んだばかりなので、イタリアつながりに奇妙な偶然の一致を感じる。湖や山などの風景描写は当初こそ、Pavese の心象風景とくらべて見劣りするような気もしたけれど、ああ、これはイギリスの伝統的な小説でおなじみの描き方だぞ、とそのうち思い出した。すると、これはこれでいいなあ、と評価を訂正。今日はそんなところです。