ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Eleanor Henderson の “Ten Thousand Saints” (2)

 忌引きがおわり、今日から職場に復帰したが、あまり仕事にならなかった。読みかけの本もあるものの、さほど進んでいない。
 "Ten Thousand Saints" について少しだけ補足しておこう。これは物語としては、ほどよく山場もあって、まずまずおもしろい。が、昨年のニューヨーク・タイムズ紙選 Best 10 Books の1冊と知って期待したほどではなかった。いちばん疑問に思ったのは、当初「酒タバコ、シンナー、マリファナ漬け」だった主人公の少年 Jude が、Krishna とやらを教祖とする新興宗教にハマり、酒とドラッグの世界から足を洗って菜食主義者となるものの、平気で暴力をふるう点である。ハマったのが新興宗教だから仕方ないのかもしれないけれど、そんなことで「改心」と言えるのかな、と違和感を覚えた。
 要するに、「ドラッグ、ハードロック、暴力、セックスなどが盛りこまれたアングラ色の強い青春小説」である。ぼくは品行方正でも不良でもない、ごくフツーの少年時代を送ったせいか、イマイチ乗れなかった。「恋と友情、傷心、後悔、自責の念といった青春の心の嵐が吹き荒れる」のはいいのだが、えぐりが足りない。
 本書とはまったく関係ないかもしれないが、ぼくはこれを読んでいるうちに、ふとパヴェーゼの『美しい夏』を読み返したくなった。英訳は、かなり前に古本で買った Peter Owen 社版のハードカバー、"The Political Prisoner" に収録されているのだが未読。ペイパーバック版がどうなっているかは知らない。ともあれ、父が亡くなったせいか年甲斐もなく、遠い記憶の彼方にある青春小説を読みたくなってきた。

The Political Prisoner (Peter Owen Modern Classics)

The Political Prisoner (Peter Owen Modern Classics)