ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Cesare Pavese の “The Political Prisoner” と “The Beautiful Summer” (1)

 杞憂だと思いたいが、9月13日の日記に「〈ブログ炎上もの〉」と書いた心配が現実のものになりつつあるようだ。同日もふくめ、何日か連続して論じた作家についてネットで検索したところ、なんと一連の記事にたどり着けなくなっているのだ。不思議に思い、作家名にこのブログ名を追加して検索してみると、驚いたことに該当項目なし! わずかに1つ、べつの本の雑感がヒットするだけだ。正確にいつかは憶えていないが、つい先日までそんなことはなかった。明らかに誰かの意思が働いているとしか思えない。
 今のところ、さすがに作品名経由だと問題の記事を発見できるのだが、これもそのうち削除されるかもしれない。ぼくは何年か前も、このブログに関連して情報操作の被害に遭ったことがあり、そのときは操作をした相手が誰かわかったが(某社)、今回は不明。イヤな予感がする。しばらく様子を見守ってみよう。
 閑話休題。Cesare Pavese の "The Political Prisoner" と "The Beautiful Summer" を読了。テキストは長編二作が収録された Peter Owen 社版のハードカバーで、最初の作品が表題作である。ペイパーバック版も、ページ数から判断してハードカバーと同じ構成と思われる。さっそくレビューを書いておこう。

[☆☆☆☆★] 二作収録された長編のうち、イタリア人の青年が約一年間、海辺の村で流刑生活を送る『流刑』が絶品。青年はいちおう自由に動きまわれるが、流刑という目に見えぬ壁にかこまれ、本質的には不自由をしいられている。この不安な閉塞状況は、まさしく現代人の精神生活を端的に象徴するものだ。みずみずしく鋭い感覚でとらえられた海や村、田園の風景はかぎりなく美しい。が、それを目にした青年は自分の心のみにくさを痛感。孤独な毎日を過ごすうち、欲情をおぼえて女と関係し、相手を傷つけることで自分もまた傷つく。そうした内面の深さ、人間であることの悲しさが孤独や不安と同時に、極力感傷を排した心象風景に織りこまれている。一方、『美しい夏』のほうは☆☆☆★★。有名な冒頭の一節はあまりにも美しく、そのあとの内容が位負けしているほどだ。やはり緊密な文体で繊細な心のゆれ動きを鮮やかにとらえた佳篇だが、少女の初恋と初体験、そして失恋は、たかが青春、されど青春というしかない。