ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Honorée Fanonne Jeffers の “The Love Songs of W.E.B. Du Bois”(3)

 ミニ闘病中、もっぱら寝転んで読んでいたのが Ruth Ozeki の "The Book of Form & Emptiness"(2021)。ご存じ去年の女性小説賞受賞作だ。
 これも表題作と同じく、「長い、長すぎる」。名は体をあらわす、というが、かたちはリッパでも中身がない。
 とはさすがに言い過ぎだけど、おもしろかったのは最初だけ。パターンが見えたところで飽きてしまった。あともう少し。これから劇的に盛り上がるといいのだけど。
 余談だが、Ruth Ozeki にかぎらず、最近のアメリカ文学で話題になる作家はどうもリベラルですな。それがいけない、というのではない。リベラルな価値観のなかに、反リベラリズムへの寛容というリベラルさが欠けていることが多い。だから作風も一面的になりやすい。火花が散るような価値観と価値観の対立、それをぼくは読みたい。ただ、そんなドラマは現代文学では世界情勢とちがって、なかなかお目にかからない。
 表題作もパターンが見えるまで、いや見えたあとでさえ、けっこうおもしろかった。大ざっぱにいうと二部構成で、「19世紀中葉ジョージア州の農園が舞台の過去篇」と「アフリカ系の若い娘エイリーがヒロインの現代篇」が交代で進む。それが最後に結びつく、というおなじみの展開だ。
 過去篇のほうは「正統的な奴隷小説」で、不謹慎ないいかただが、「先住民の迫害もまじえた点が目新しい程度」。人種差別はマヒしてはいけない問題だと思いつつ、フィクションとして見ると、なにを読んでも「いまやおおむね想定内」の感は否めない。
 とはいえ物語性は抜群。先住民のなかに勇者や美女がいるという設定は平凡だけど、物語を動かすには欠かせない要素でもある。要は、その動かしかたが Jeffers はうまい、ということですね。(この項つづく)

(下は、この記事を書きながら聴いていたCD)

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