ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“This Is How You Lose Her” 雑感

 今年の全米図書賞候補作、Junot Diaz の "This Is How You Lose Her" を読んでいる。早くもペイパーバック化されているので、シノプシスも読まずに取りかかった。粗筋をちらっとながめた候補作は、Louise Erdrich の "The Round House" と Kevin Powers の "The Yellow Birds" の2冊だけ。直感だが、"The Yellow Birds" はこの賞向きなのでは、という気がする。要注目!
 去年の受賞作、Jesmyn Ward の "Salvage the Bones" は、ハリケーンと犬の話だったな、という程度しか憶えていない。それより、ご存じ Tea Obreht の "The Tiger's Wife" が落選とは何ごとですか! それから、Edith Pearlman の "Binocular Vision" がじつに味わいぶかい短編集だったし、Julie Otsua の "The Buddha in the Attic" も小品ながらよかった。Andrew Krivak の "The Sojourn" だけはパスしたが、受賞作よりおもしろいのではと疑っている。さほどに納得のいかない選考結果だ。
 おととしは、受賞した Jaimy Gordon の "Lord of Misrule" が馬の話で、レースの模様がわりとおもしろかった。しかしディック・フランシスには遠く及ばない。Peter Carey の "Parrot and Olivier in America" もそれなりに楽しかったが、いかんせん、歴史観がありきたり。Nicole Krauss の "Great House" も読んだが中身は失念。
 3年前の受賞作、Colum McCann の "Let the Great World Spin" は綱渡りの話。これは今でも読んだときの昂奮がよみがえってくる。Daniyal Mueenuddin の "In Other Rooms, Other Wonders" はパキスタンが舞台の短編集。これもなかなかよかった! Bonnie Jo Campbell の "American Salvage" はさっぱり思い出せない。Jayne Anne Phillips の "Lark and Termite" は、たしか朝鮮戦争の話だったという程度。
 ええい、こうなったら駆け足で、読んだ候補作をぜんぶふりかえろう。2008年は Marilynne Robinson の "Home" しか読まなかった。"Gilead" のほうがよかったな、というくらい。07年。Joshua Ferris の "Then We Came to the End" が愉快なサラリーマン小説でしたね。これはオススメ! Mischa Berlinski の "Fieldwork" も読んだが記憶にない。06年と05年はぜんぶパス。04年の受賞作、Lily Tuck の "The News from Paraguay" があまりにひどかったからだ。03年の候補作、Edward P. Jones の "The Known World"、これは秀作です。実際に読んだのは06年で、そのころからぼくが古典巡礼を中断し、現代小説へと傾斜するきっかけとなった作品のひとつだと思う。
 以上、まことにささやかな全米図書賞体験記でした。レビューは読みかえさず、記憶だけを頼りにインパクトの度合いを測ってみたが、ここで Junot Diaz の話にもどると、過去の作品群にくらべ、ううん、どうなんでしょうね。長編のような短編集のような作品で、中には〈えぐり〉の効いた話もあるのだけれど、なんだかもう「中身は失念」という気がしなくもない。じつは時間があれば明日にでも読みおえられそうなのだが、明日は土曜なのに出勤して、なおかつ残業しないといけない。日曜になって続きを思い出せるかな。