ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Adriana Trigiani の “The Shoemaker's Wife” (2)

 まずテキストから補足すると、ぼくが読んだのはイギリスの Simon & Shuster 社版。米アマゾンのブッククラブに載っているのは、もちろんアメリカ版のほうだ。どちらにしても500ページ近くあり、もし書店で手にしたら買うのをためらうかもしれない。
 同クラブのことは雑感でもふれたが、Literary Fiction コーナーの1ページ目に載っている既読の作品から判断するかぎり、通勤快読本が主流のようだ。いま検索すると、おとといから順番が変わっている。たぶん売れ行きで入れ替えているのだろう。この "The Shoemaker's Wife" は前回8位だったが、きょうは14位。レビュー数760で星4つ半とは恐れいる。そんな予備知識があれば、少しためらってから購入したくなるかもしれない。
 で、読みはじめると、たぶん、ぼくのように「完全にハマって」しまうのではないだろうか。あとはどんどん読み進むだけ……。
 ところが、ぼくは根がアマノジャクなので、本書を大いに楽しみつつ、どうして自分が「完全にハマって」しまったのか、という観点からもメモを取りつづけた。すると、ははあ、だからこれはベストセラーになったんだな、というカラクリがぼくなりに見えてきた。その結果を簡単にまとめたのが、きのうのレビューである。
 ともあれ、この Adriana Trigiani は、読者を共感させる手練手管をほんとうによく心得た作家だと思う。ぼくのメモは、どうやってベストセラーを書くか、という覚え書きのようなものだった。といって、ぼくにベストセラーが書けるわけではないことは言うまでもない。服装ひとつとっても、これほど「きめ細かい描写」はとうてい無理だ。
 レビューでも述べたとおり、本作には「随所に泣かせる場面があ」る。ぼくなど、年をとって涙もろくなったせいか、電車の中でその場面が来そうになると、ひと息いれたものだ。だから、☆4つは確実として、★をひとつオマケしてもいいな、と思った瞬間もある。が、最後、筆が明らかに滑るような調子になったのでオマケはしなかった。それでも、文芸エンタメ路線としては最高の評価である。
 「クセのない標準的……で読みやすい」文章というのも、ベストセラーの条件のひとつだ。こういう本はいつ読むか。今でしょ!