ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

George Saunders の “Lincoln in the Bardo”(2)

 これだけがんばってるんだもの、★をひとつオマケしなくちゃ。というのが点数評価の根拠である。
 本書の前にたまたま、今年の全米図書賞受賞作 Jesmyn Ward の "Sing, Unburied, Sing" を読んでいたのだが、驚いたことに両書ともテーマは家族の死。英米の代表的な文学賞の受賞作がともに同じ題材を扱っていようとは、偶然の一致にしてもおもしろい。といっても、作者はどちらもアメリカ人ですけどね。
 それだけではない。もちいられている技法がマジックリアリズムという点でも両書は一致している。これも偶然だろうか。それとも、最近の英米文学の傾向を物語っているのか。
 いずれにしても、ぼくはまず "Sing, Unburied, Sing" を読みながら感じていた疑問を、この "Lincoln in the Bardo" においても感ぜざるをえなかった。つまり、テーマそのものがよく言えば古典的、わるく言えば平凡なのは致し方ないとして、テーマの深い掘り下げこそ認められないが、新しい角度から描こうとしている作品をどう評価すればいいのだろうか。
 要するに、古い話をいかに新しく語るか。これはひょっとしたら現代作家の直面する問題かもしれないけれど、読者としては、それが古い話だから減点するのか、新しい語り口だから高く評価するのか。
 で、"Sing, Unburied, Sing" の場合は、最後の最後まで迷ったあげく、☆☆☆★★。マジックリアリズムの「試みはかなり成功している」が、決して「斬新」とまでは言えないからだ。
 一方、"Lincoln in the Bardo" は「これだけがんばってるんだもの、★をひとつオマケしなくちゃ」というわけである。べつに好き嫌いの問題ではない。そのがんばりようについては、レビューで詳しく述べたつもりだ。
 そうそう、いま思い出したが、Paul Auster の "4321" についても上と同じような評価の問題、あるいは「現代作家の直面する問題」がかかわっている。
 いかん、長くなりそうだ。きょうはおしまい。
(写真は宇和島市妙典寺の裏山にある桜の木。亡父の一周忌で帰省したときに撮影)