ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Alan Hollinghurst の “The Line of Beauty” (2)

 ほんとうは Barbara Kingsolver の "The Poisonwood Bible" について、とりわけ、その「多彩な話術」について詳しく論じたかった。残念だ。いつもなら本を読んだあと読書メモはゴミ箱行きなのだが、今回はしばらく取っておこう。近いうちにまた、おさらいをする機会をぜひ作りたい。
 さて、「本書から得るものは何もない」と酷評してしまったこの2004年のブッカー賞受賞作。え、あんた、周回遅れだよ、という声が聞こえてきそうだが、じつはこれまた長年の宿題だった。受賞直後、3分の1ほど読んで投げ出したままになっていたのだ。
 当時はまだ、ブッカー賞といってもあまりピンと来なかったように思う。読書記録によると、そのころまでに受賞作は12冊ほど読んでいるものの、だからといって格別の関心があったわけではない。よく通った神田の三省堂の洋書コーナーで平積みされているのを見かけ、ふうん、今年はこの本が受賞したのか、という感じで読んでいた。本書もそんな一冊だった。
 中断したときのことは、わりとはっきり憶えている。まあまあおもしろい。でもこの先ずっと読みつづけても、今ここでやめても、たぶん感想は似たり寄ったりじゃないかな。今回12年ぶりに取り組み、こんどは最後まで読んだ結果、残念ながら当時の直感は正しかったと言わざるをえない。
 その後しばらくして、ある出版社の編集者と雑談しているうちに、たまたま本書に話題がおよんだことがある。ぼくがざっと上のような印象を述べたところ、ああいうものは日本ではなかなか出しにくい、という答えが返ってきた。ぼくは作品の出来ばえに疑問を呈したのだが、そもそも内容的に問題があるという話だったのである。
 それから10年以上たった。少なくとも wiki で調べたかぎり、邦訳はまだ出ていないようだ。してみると、「なかなか出しにくい」というわが国の出版事情は今も変わっていないのかもしれない。ゲイの市民権という点ではどうだろうか。
(写真は宇和島市三島神社。小学校の遠足で、堀部公園とセットで定番の目的地)。