ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The Magician's Assistant" 雑感(5)

 きょうは土曜日だが、夕方まで職場で残業していたので、軽くメモだけ。
 いま同時に並行して4冊の本を読んでいる。といっても、そのうち1冊はコミックで、吉田秋生の『吉祥天女』。これがいちばんおもしろい。
 2回目だが、内容はほとんど失念していたので初見に近い。ヒロインの小夜子は文字どおり魔性の女。そのせいか、「innocence と experience の対立と融合」という、ぼくが最近凝っている人間的なテーマを超越した存在であるかのようだ。『海街diary』とよく似た顔つきの人物も登場するものの、素人目にはまるで別人の作品のように見える。吉田秋生、やはりタダモノではないですね。
 コミックは就眠儀式用と決めている。キッチンで読んでいるのは『ゼロの焦点』と、森沢明夫の『海を抱いたビー玉』。種も仕掛けもわかっているのに、リメイク版の映画を見たばかりなのに、清張ミステリのほうがおもしろい。なるほど、ここにこんな伏線が敷かれていたのだな、という読み方だ。それにしても、「人生をもう一度やり直したい」という叫びは哀切きわまりない。「出来るものならば 許されるのなら もう一度生まれて やり直したい」。由紀さおりの「手紙」が聞こえてきます。
 森沢明夫のほうは初見だが、読んでいるうちに、だんだん種も仕掛けも見えてきた。ハートウォーミングで、いい話だと思う。でも、もしこのままぼくの予想どおりの結末だとすると、「3回涙が出た」というキャッチコピーは、ちとオーバーではないかしらん。
 4冊目は通勤用で、表題の "The Magician's Assistant"。いままで舞台はヒロインの Sabine が住むロスだったが、きょう読みはじめたところから Nebraska 篇。亡き夫 Parsifal の母親と妹が訪ねてきたあと、Sabine はどうやら一大決心をする。ロスを永久に離れ、義理の母親たちと同居しそうなのだ。じつに意外な展開で、この先どうなるかまったく読めない。その意味で、少しおもしろくなってきた。
(写真は、宇和島市神田川原(じんでんがわら)にあった貧乏長屋の界隈。昔はもちろん橋にガードレールはなく、土の道の延長で土橋(どばし)と呼ばれていた。土橋のたもとには木製の電柱があり、夜になると裸電球のまわりで蛾が乱舞。付近にある電柱はその一本だけだったと記憶する)