ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Honorée Fanonne Jeffers の “The Love Songs of W.E.B. Du Bois”(4)

 きのう鶴岡八幡宮へ、三番めの孫アカリちゃんの初宮参り。途中予報どおり、にわか雨に遭ったけれど、さいわい、お参りが済んだころにはまたすっかり晴れ上がり、ことなきを得た。

 鎌倉は平日にもかかわらず人出が多く、とりわけ修学旅行生と外人が目についた。串焼き肉の屋台前でぼんやりたたずんでいたら、外人の少年がなにやら尋ねてきたので、'Go ahead.' こんなひとことでも英語を発したのは、はて、何年ぶりだろうか。
 きょうはジムの行き帰りに、バスのなかで "Demon Copperhead"(2022)を試読。ご存じ今年のピューリッツァー賞受賞作で、女性小説賞のほうでも最終候補作。それどころか、今年のブッカー賞、全米図書賞も獲るのでは、という現地ファンのコメントを目にしたこともある。でも対象年度の規定はクリアしているのかな。
 まだほんのカジリ読み程度だけど、開巻クイクイ読めるほどおもしろくはなさそう。帰りのバスでは、ひさしぶりの筋トレとランニングで疲れてしまったせいもあり、いつのまにか活字がぼやけ、眠りこけてしまった。
 さて表題作。これは途中まで、現代篇のほうも相当におもしろかった。「正統的な奴隷小説」といえる過去篇は歴史小説でもあり、このふたつのレッテルだけで魅力はじゅうぶんに伝わるものと思う。
 それが「アフリカ系の若い娘エイリーがヒロインの現代篇」となると、Ailey と高校のクラスメイトやボーイフレンドたちとの交遊がイベントフル、というより対決がなかなかサスペンスフル。Sunshine twisted her mouth. "You walk around this school with your nose in the air like you're better than us, and then you think it's completely okay to kidnap somebody's boyfriend. That's you, Ailey. Miss Selfish Superior Bitch." / ... "No, actually, I'm Miss Selfish Superior Black Bitch. ... I'd be careful, if I were you. But if you're feeling froggy, go'head and try me. I'd love to whip your ass and get expelled. Because I don't want to be at this school, anyway."(p.117)
 これなどいかにも青春小説らしいひとコマで、この現代篇の雰囲気をよく表している一例だが、ここで注目すべきは Ailey の "I'm Miss Selfish Superior Black Bitch." ということば。「クラスメイトやボーイフレンドとのからみあいがコミカルで、かつ緊張感もあり、それだけならふつうの青春小説、学園ドラマとなるところ、文字どおり肌感覚としての人種問題がいり混じり、ぴりっと紙面を引き締めている」。
 女子生徒同士の対決なんて、ぼくはもちろん見聞きしたこともないけれど、いかにもありそうな話だと思いつつ、Black の一語に目が釘づけになってしまった。(この項つづく)