ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

David Mitchell の “Cloud Atlas”(1)

このところボチボチ読んでいた2004年のブッカー賞最終候補作、David Mitchell の "Cloud Atlas" をやっと読了。さっそくレビューを書いておこう。Cloud Atlas作者:Mitchell, DavidHodder And Stoughton Ltd.Amazon[☆☆☆☆★] 人類に果たして進歩は、未来はある…

Olga Tokarczuk の “Flights”(4)

本書の目玉のひとつは解剖学にかんする断章だろう。人体や内臓の標本を展示した博物館、17世紀の死体解剖の話など、いわば怖い物見たさも手伝ってかなり面白い。奇書と言ってもいいほどだ。が、それとタイトル "Flights" との関係はどうなのか。 そう疑問に…

Olga Tokarczuk の “Flights”(3)

論より証拠、と俗に言うが、この出典が〈江戸いろはかるた〉だとは先ほど調べるまで知らなかった。調べようと思ったのは、どこかの国の政界やマスコミのあいだで空理空論の思い込みが蔓延しているような気がしたからではない。この "Flights" で示されている…

Olga Tokarczuk の “Flights”(2)

最終的な評価は☆☆☆★★にしたけれど、途中はこれ、かなり退屈な本だった。ソファに寝転がって読んでいると、ついウトウト。目が覚めると、聴きはじめたはずのブルックナーがもう終わり、ということがよくあった。ブルックナーがいけなかったのかな。 もちろん…

Olga Tokarczuk の “Flights”(1)

ゆうべ、今年の国際ブッカー賞受賞作、Olga Tokarczuk の "Flights"(2007)を読了。原語はポーランド語。さっそくレビューを書いておこう。(後記:その後 Olga Tokarczuk はノーベル文学賞を受賞しました)Flights作者:Tokarczuk, OlgaRiverhead BooksAmaz…

Orhan Pamuk の “My Name Is Red”(2)

何度か(2)を書こうと思いつつ、きょうまでズレこんでしまった。泣く子も嗤うような〈恥ずかしながら未読シリーズ〉だからだ。どんな感想を述べても、何かの記事の二番煎じでしょう。 ということで、まず周辺情報から。本書は国際IMPACダブリン文学賞受賞…

Orhan Pamuk の “My Name Is Red”(1)

きのう、2003年の国際IMPACダブリン文学賞受賞作、Orhan Pamuk の "My Name Is Red"(1998)を読了。原語はトルコ語。一日寝かせたところでレビューの書き出しが頭にちらついてきた。さてどうなりますか。My Name is Red作者:Pamuk, OrhanFaber And Faber Lt…

Andrew Sean Greer の “Less”(2)とゲイ小説名作選

本書のピューリッツァー賞受賞は意外と思った人が多いかもしれない。P Prize. com の直前予想では泡沫候補扱いだったからだ。 本命視されていたのは、昨年の全米図書賞受賞作、Jesmyn Ward の "Sing, Unburied, Sing"(☆☆☆★★)。ついで、今年(対象は昨年)…

Salman Rushdie の “Midnight's Children”(2)

これはもちろん〈恥ずかしながら未読シリーズ〉。そんなシリーズでも開始しなければ、あまりにも〈いまさら感〉の強い作品なので、ずっと積ん読のままだったことだろう。 前回(1)のレビューを読み返してみたが、案の定、つまらないことしか書いていない。…