ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

単語録:and everything

  and everything という成句について英和辞典を調べると、「その他もろもろ」「〜など」「〜のようなもの」とあり、次のような用例が載っている。Tina's worried about her work and everything.「ティナは仕事やらその他もろもろで悩んでいる」(ロングマン) We became relatives and everything.「我々は身内のような親しい間柄になった」(ジーニアス) 『ロングマン英和』の例は Longman Dictionary of Contemporary English と同じで、後者の定義は and a lot of other similar things となっている。以上が and everything の基礎知識だが、この句を訳すときは文脈によって工夫を要する場合がある。
 "Last time, Mommy called the firemen. She said you have to do it fast or they come with their sirens and everything." これは、料理の煙に火災報知器が反応して消防署に自動的に連絡が伝わり、安全確認の電話をすぐに入れないと面倒なことになる、という話。この with their sirens and everything を上の辞書訳で片づけようとすると、どうもしっくりこない。『ジーニアス』には「〜や何やかや」という訳語もあり、これを使って「サイレンやら何やらを鳴らして」と訳す手も考えられるが、サイレン以外に消防車が鳴らすものと言えば、せいぜいクラクションくらいのはずで、a lot of other similar things を鳴らすとは言えない。
 そこでこの用例は、次のように訳してみた。『この前はママが消防署に電話したわ。すぐに電話を入れないと、消防車がサイレンを鳴らしながらやって来たりして大変なことになるそうよ』 つまり、この everything は本来、直前の名詞と同類のものを指すはずだが、ここでは with their sirens「サイレンを鳴らして」と同様のアクションを指すと考え、さらに、come 以下と同類項であるかのように少し飛躍した訳を試みたわけである。いざ消防車が駆けつけてくるときの大騒ぎからして、このほうが現実的な解釈であることは言うまでもないだろう。この「〜したり」という訳語がふさわしい例はけっこう多いのではないか。なお、the firemen を「消防署」「消防車」と訳すのは日本語として常識だと思う。