ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"Through Black Spruce" 雑感

 Elizabeth Hay の "Late Nights on Air" がとてもよかったので、続いてギラー賞の昨年の受賞作、Joseph Boyden の "Through Black Spruce" に取りかかった。これも今のところ、とても面白い。といっても、"Late Nights on Air" とは対照的に、アクションまたアクションといったおもむきがあり、またミステリタッチでもあり、基本的にはストーリー展開の面白さで読ませる作品だ。
 主な舞台はカナダ北部、オンタリオ州の湾岸の町。登場人物のほとんどはインディアンで、そのうち二人が交代でモノローグを続ける。一人は元パイロットで今は猟師のウィル。二人の姪、アニーとスザンヌに語りかける形で、死んだ両親や別れた妻、子供時代の思い出などをまじえながら、最近起こった一連の事件の経過を報告する。
 その全貌はまだ明らかにされていない。ウィルの一家は代々猟師だが、一方、酒の密造に始まり、近ごろは麻薬取引にまで手を染めるようになった一家があり、両家は反目。ワル一家の長男からウィルは再三、暴行を受け、ついに…。
 じつはこのウィル、一ヵ月以上も昏睡状態で、上の話はすべて無意識のうちに語り続けている。その看病に当たっているのがアニーで、彼女の独白はもっぱら、ウィルが意識を回復することを願って語りかけるものだ。そこに彼女自身が経験した最近の事件の報告が混じる。
 こちらもまだ顛末は不明。妹のスザンヌがワル一家の末っ子と駆け落ちして失踪、その消息をつかもうとトロントモントリオール、ニューヨークにまで足をのばす。その一方、妹と同じくモデルとして活躍していたが、今はなぜか元の町に戻り、狩りをしながらウィルの看病につとめている。
 …ううん、へたくそな要約だ。これではこの本の面白さがさっぱり伝わってこない。そう思って表紙をながめると、'An astoundingly powerful novel of contemporary Indian life, full of the dangers and harsh beauty of both forest and city' との紹介文。まさしくその通り! さすがプロのコピーライターだな。