ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“The Thousand Autumns of Jacob de Zoet”雑感(1)

 今度は David Mitchell の "The Thousand Autumns of Jacob de Zoet" に取りかかった。何しろ今年のブッカー賞候補作はもうペイパーバックでほとんど読めるので、夏読書の予定がすっかり狂ってしまい、うれしい悲鳴だ。本当は積ん読の古典をじっくり読みたかったのだが…。
 積ん読といえば、日本でもファンの多い David Mitchell の作品も Andrea Levy と同じ事情で遠い記憶の彼方に消えさり、ぼくは初体験に近い。この前ロングリストにノミネートされた "Black Swan Green" もどういうわけかあまり食指が動かずパスしてしまった。しかし今度の作品は、Willam Hill のオッズによると "The Slap" と並んで1番人気(9 / 2)。前評判が高いようだ。
 というわけで大いに期待して読みはじめたのだが…これ、ほんとに1番人気なのかな。まだほんの少ししか読んでいないので断定はできないけど、今のところ一気に読み通したくなるほどの魅力は感じられない。
 舞台は江戸時代の長崎出島。オランダ商館の会計検査係として赴任した Jacob が主人公で、過去の帳簿を調べ、汚職を摘発するのが主な仕事。冒頭は長崎奉行の妾の難産シーンで、その産婆をつとめた若い日本人女性に Jacob は関心を寄せる。ところが、彼女のいる前で医学実習のモルモット扱いされ、なんとオケツを丸出しにする破目に…といったエピソードもあってそこそこ楽しめる。が、コミカル・タッチの小説なら Levy の "The Long Song" を読んだばかりで、あちらのほうが最初からずっと面白かった。ま、今後を期待しましょう。