ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Lucinda Riley の “Hothouse Flower”(2)

 レビューや雑感ではいくつか気になる点も挙げたが、そもそもこれは息抜きをしようと思って取りかかった本なので、その目的がかなった今はとても満足している。あちらのベストセラー・リストをながめていると、タイトルとカバーから判断して、本書のように明らかにストーリー重視型と思われる作品を時折見かける。イギリスとアメリカでは若干おもむきが異なり、イギリスの場合はゴシック・ロマンスや歴史小説、大河小説の系統が多いようだ。
 この前、意識的にこんな本を読んでみようと思ったのは去年の11月で、そのとき選んだのは Mary Nichols の "The Summer House" だったが、本書もあちらと同様、「通勤時の読書にはもってこいだろう」。文学ミーハーのぼくはシリアスな作品にずっと接していると息が詰まるので、たまにこの手の軽い読み物を衝動的に読みたくなる。そんなとき、基準はとにかくタイトルとカバー。知らない作家の知らない作品だと、なおさら興味をそそられる。
 昨日も書いたが、本書は Richard & Judy Book Club の今春の推薦図書で、ほかにも去年のブッカー賞候補作だった "Room" や "Tresspass" などが選ばれている。このブック・クラブにどれほど権威があるのかは知らないが、イギリスでは本の売れ行きに一定の影響を与えているようだ。というより、もっぱら大衆受けのするストーリー重視型の作品を薦めているクラブだろう。
 ともあれ、バンコックの市街風景など、インド系の作家ならもっと濃密に描くことだろうなと思いつつ、これはこれでゴキゲンな「通勤快読」本でした。