今年の「ブッカー賞読書」第4弾。Carol Birch の "Jamrach's Menagerie" に取りかかった。あちらの評判はかなりいいようだ。William Hill のオッズは第3位、Ladbrokes では第6位。アマゾンUKでも星4つ。レビュー数は何と54もあり、A.D. Miller の "Snowdrops" に次いで2番目に多い。それだけ注目を集めている証拠だろう。Carol Birch は初読の作家だが、裏表紙の紹介によると、ロングリスト入りは "Turn Again Home" (2004) という作品に続いて2回目のようだ。
今まで読んだ範囲の印象を述べると、これ、フシギな小説です。まず物語の方向性がなかなか読めない。主筋そのものは単純なのだが、この先、何が起こって、どんな結末を迎えるのやら。次に、いったい何を言おうとしているのか、それもまだよくわからない。いちおうヒントらしきものはあるのだが、はて、ほんとうにそうなのかしらん。
具体的に言おう。開幕は19世紀なかば、ロンドンの路上で貧しい少年 Jaffy が虎に咬まれながら、奇跡的にかすり傷程度で助かる、というショッキングな事件。それをきっかけに Jaffy は、虎を飼っていた男の営む動物園(実際は、大きなペット販売園というべきか)で働くようになる。おや、Sara Gruen の "Water for Elephants" のような話かと思ったら、そうでもない。同じく動物の世話をしている少年 Tim とケンカしたり仲直りしたり、その双子の妹 Ithbel にほのかな恋心を抱いたり…ふむふむ、これは少年の成長物語なのかな。
と思ったら一転、今度は海洋冒険小説が待っていた。ペット販売園に動物を仕入れているハンターが竜を捕獲しようと Tim を誘い、Jaffy も志願。捕鯨船に乗り組み、東インド諸島へと向かったのだ。荒くれ者の航海士、ひどい船酔い、緊張みなぎる捕鯨シーン…当然、『白鯨』を思い出したが、これは比較しないほうがいいでしょう。
竜探しということでファンタジーに接近するのかとも思ったが、Jaffy が空想にふけったり夢を見たりする場面はあるものの、実際、ある島に上陸して「竜」を発見、捕獲する展開となり、まあやっぱり、「海洋冒険小説」なんでしょうな。
問題は、さて、「この先、何が起こって、どんな結末を迎えるのやら。次に、いったい何を言おうとしているのか」。予知能力があり、「竜」と言葉をかわすことができるというフシギな少年も登場するが、はて、その意味は? とにかく、わけがわからないまま読んでいます。