ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Jamrach's Menagerie” 雑感(2)

 昨日は「これ、フシギな小説です」と書いたが、今日は物語の方向も定まり、何だ、やっぱりそうだったのか、といったところ。目鼻がついてみるとフシギでも何でもなく、ごくフツーの海洋冒険小説です。あ、どんでん返しがなければ。
 ぼくは『宝島』タイプの冒険小説が大好きで、その昔、アリステア・マクリーンハモンド・イネス、デズモンド・バグリイなどを読みまくったものだ。いずれもエンタメ路線だが、ある約束事のもとに話が進み、その約束事を超えた問題に作者が踏みこむことはなく、読んでいるこちらも期待しない。手に汗握る冒険を楽しむだけでよかった。
 一方、同じ海洋冒険小説でも、明らかにエンタメ路線とは一線を画するものがある。そもそも冒険小説と呼ぶべきではないかもしれない。たとえば、メルヴィルの『白鯨』や『船乗りビリー・バッド』、コンラッドの『ロード・ジム』、ゴールディングの『蠅の王』などだ。ほとんど内容を失念してしまったので自信はないが、Yann Martel の "Life of Pi" もこのタイプに属するかもしれない。簡単に言えば、冒険を通じて人生の根本問題に迫ろうとする小説である。
 ここで本書に戻ると、これはもちろんエンタメ路線ではないが、さりとて今のところ、「冒険を通じて人生の根本問題に迫ろうとする小説」でもない。基本的に、「海洋冒険小説」と聞いて想像する嵐や遭難といった定番のエピソードが中心を占めている。それ以上でもそれ以下でもない。だから、「ごくフツーの海洋冒険小説」としか言いようがないわけだ。
 …でもまだ途中。ただの冒険ではなく、この先、「どんでん返し」があり、「人生の根本問題に迫ろうとする」突っこみがあることを期待しましょう。