ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Miranda July の “No One Belongs Here More Than You”(1)

 きょうは Mario Vergas Llosa の "The Green House" について若干補足しようと思っていたのだが、先ほど2007年のフランク・オコナー国際短編賞受賞作、Miranda July の "No One Belongs Here More Than You"(2007)を読了。記憶が薄れないうちにレビューを書いておこう。

No One Belongs Here More Than You (Canons)

No One Belongs Here More Than You (Canons)

  • 作者:July, Miranda
  • 発売日: 2015/02/05
  • メディア: ペーパーバック
[☆☆☆★★] ショートショートをふくむ16の物語の主人公はほとんど女性。そのまた大半が独身で、家族や友人、隣人、上司たちと日常的にかかわるうちに相手の意外な側面を知り、思わぬ事件に巻き込まれるというパターンが多い。軽妙でユーモラスな筆致が楽しく、その最たる例は、プールのない街で知りあった老夫婦に、アパートの室内で水泳の指導をする第2話。ユーモアのなかに哀感がこもり、滋味豊かな作品に仕上がっている。ゲイやレズなど禁断の世界もふくめた性的な描写が多いのも特徴のひとつだが、題材のわりに不潔感はなく、さらっと読める。ピープショーに出演した女がストーカーにつきまとわれ、人生の選択を迫られる第8話などがいい例だ。妻妾同居に近い複雑な家族関係が次第に明らかになったあと、自分の育てた娘がエゴをむき出しにする最終話も読ませる。いわゆるオチではないが、どの話も日常的な発端と、非日常に近い結末との落差が激しい。女ひとり、いや人間だれしも、生きているといつかは重大な局面が訪れるものである。