ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Colin Barrett の “Young Skins” (1)

 2014年のフランク・オコナー国際短編賞(Frank O'Connor International Short Story Award)、および同年のガーディアン紙新人賞(Guardian First Book Award)のダブル受賞に輝いた Colin Barrett の "Young Skins" をようやく読了。さっそくレビューを書いておこう。

Young Skins

Young Skins

  • 作者:Barrett, Colin
  • 発売日: 2014/12/11
  • メディア: ペーパーバック
[☆☆☆★★] 人生には、なかんずく青春時代には、届かなかった思いがいくつかある。それは純粋であればあるほど切ない。本書はそんな思いを七つ、スラング混じりの力強い、時にリリカルな文体で鮮やかにとらえた短編集である。なかでも、中編といってもいい第5話 "Calm With Horses" が傑出している。突発的な暴力とアクション、強烈なサスペンスに圧倒されるが、ふと紛れこむ家族への思いが隠し味。平凡な日常風景に、はたまた怒濤のような迫力ある展開に、さりげなく挿入されるだけに忘れがたい。以後、切れ味鋭い佳編がつづいている。アル中男の孤独と喪失感を予想外の物語でみごとに浮かびあがらせ、バーの前を過ぎゆく葬列に青春の苦い思い出をよみがえらせる。平凡なテーマから非凡な一瞬の光景が生まれるという、短編ならではの醍醐味である。その共通項が「届かなかった思い」なのだ。完成度はやや落ちるものの、前半の四話にしても、若い男女のすれ違い、ボタンの掛け違いに同じ思いがこめられている。青春とは、なんと切ないものなのか。